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従来の問題点6(位相歪み)


 上記のグラフは、位相歪みをイメージし易いように、100Hzの純音(サイン波)に300Hzの純音を加えた複合音を生成させる際に、後者の位相を0~180度までずらした波形を示すものです。位相歪みとは、周波数によって遅延時間が異なる場合に、一部の周波数成分が不均一に遅延して、元の信号から波形が変化することで生じる歪みのことをいいます。

 図に示すように、位相歪みの程度により波形が大きく変化しますが、周波数スペクトルは全て同じとなり、一般的に高調波歪み等と比較して聴覚しにくいと考えられています。アンプやDAC、ADCによる位相歪みは比較的小さいのですが、デジタル信号同士の波形を比較する場合、位相歪みにより、大きな差分が生じることになります。例えば、下の図は、1kHzの純音と125Hzの純音とを足し合わせた複合音について、元のwaveファイルと、これをD/A+A/D変換したwaveファイルとを比較したものです。上側の波形データでは、殆ど2つの信号が重なって見えますが、位相歪みによって波形が異なる形状になっています。この図は1kHzの純音について位相を一致させた状態ですが、125Hzの純音の成分の位相がずれており、位相ズレによる差分(赤線)が生じています。


 このため、楽曲を用いて、信号波形の解析を行なう場合でも、位相歪みを補正した状態で解析を行なわないと、差分グラフが大きくなるため、聴感上の差異よりも解析結果の差異が大きくなってしまうという問題があります。



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