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「音質」の考え方について

 趣味としての音楽鑑賞という意味では、好きな曲が人それぞれであるように、再生装置から出る音も、好みの問題だと考えることができます。なかには、音源の情報量をより少なくして聴く方が好みに合うという人もいます。しかし、オーディオを趣味とする方の多くは、音源に対して、例えば周波数レンジやダイナミックレンジの狭い再生装置、あるいは歪みやノイズが多い再生装置は、良しとしないはずです。つまり、音源に対して、情報量が少なくなることや、不可逆的に情報が変化することは、音質が劣化する方向であると考えています。

 一方、再生装置から出る音に色付けをすることで、好みの音になる場合もあります。例えば、好みのスピーカーを使用して好みのセッティングで聴く場合や、トーンコントロールを調整する場合です。その場合でも、スピーカーに到達する音楽信号や、トーンコントロール回路から出力される音楽信号は、音源から波形変化していないことが望ましいといえます。つまり、好みの音を実現する場合でも、再生装置の基本性能としては、音楽信号を波形変化させないことが求められます。

 しかし、「音楽信号を波形変化させない」(換言すると「忠実再生」)と一言でいっても、何を出発点として波形変化の程度を評価するのか、またどのようにして波形変化の程度を測定するのか、というのは難しい問題です。最も理想的な評価方法は、録音の際の演奏を、実際に適切な環境で再現(再演奏)して、適切な位置で聞こえる音と、オーディオ装置で再生して自分の環境で聴く音と、の差を評価することです。

 しかし、そのような演奏の再現は不可能であり、一般に入手可能な最も上流側の音源は、CDやストリーミングなどの音源となります。そして、現在、これらの音源は、アナログレコードを除いて全てデジタル信号ですから、直接比較しようとするとデジタル信号同士を比較する必要があります。一方、スピーカーユニットに入力される信号は、アナログ信号ですから、少なくともスピーカーユニットに入力されるまでの経路での波形変化を評価しようとすると、アナログ信号をデジタル信号に変換しないといけません。

 仮に、音源であるデジタル信号と、オーディオ装置の出力から正確に変換されたデジタル信号とが、完全に一致する場合、音楽信号の波形変化がなく、基本的に音質の劣化はないと表現できます。しかし、実際には、音質、すなわち音楽信号は、音源に対して、スピーカーに入力されるまでに徐々に変化(即ち、波形変化)します。このため、その変化の程度が小さいほど、音楽信号の波形が維持されているといえます。異論もあると思いますが、スピーカーに入力されるまでの再生装置の基本性能として、このように音楽信号の波形が維持された状態を、オーディオ装置としての「音質が良い」と定義することが可能です。

 従って、本ウェブサイトにおける「高音質」とは、再生装置によって音楽信号が波形変化しないこと、より具体的には、音源となる信号データに対して、これが復元できる程度に信号データの情報量と情報の質が維持されている状態を指すことにします。

 「音質」について、上記のように定義した場合、人の主観的な評価が入り込む余地はありません。しかし、波形変化を人間が聴覚(差異を判別)できるものでなければ、これを議論しても無意味です。従って、波形変化の質又は量が人間の聴覚できるレベルであるか否かについても検討し、人間の聴覚できる波形変化について、明らかにする必要があります。

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